本研究のこれまでの成果は次の通りである。 1.込栓と側材に関する剛性と強度確認 込栓を用いた継手材の一面および二面せん断試験より、側材スギのせん断破壊強度と込栓カシのせん断破壊強度の関係から、込栓カシの砂壊を先行させる方が、側材スギのせん断破壊を遅れさせるねばりある破壊に至ることが判明した。このことは継手耐力が込栓破壊強度から予測可能になることを示している。その場合の側材厚/込栓幅(t/s)の範囲は1.2〜2.3で、端あきL≧5・S、材成Bに対し込栓幅S≦B/5が適当である。さらに、込栓カシの継手の最大せん断強度はτ=110.1(t/s)+98.3で予測できる。また、二面せん断試験で初期弾性部分の剛性を把握するために、単位変化に対応する強度で表現して、初期剛性係数として求めた。この係数と(t/s)の関係は(τ/δ)=270.0(t/s)+272.5で示される。 2.込栓を用いた各種継手の引張強度と曲げ強度 母材の引張強度398kgf/cm^2、曲げ強度399kgf/cm^2である。これに対し追掛大栓継手の引張強度は15mm角込栓で10.2%、21mm角で11.4%、曲げ強度で36%である。金輪継手は引張りで8.4%、曲げで30%となり、金輪+込栓継手の場合、引張りで10.2%、曲げで38%を得た。これらの結果から追掛大栓継手の継手効率は金輪継手より優れていると言える。解析的な耐力評価は未解決であるが、1.項の評価を基本に今後検討を加えたい。 3.込栓留めによるはり-柱T字型仕口の耐力性状 T字型仕口部の水平、鉛直変位、回転などを精度よく抽出していることから、はり部材への加力と共に、作用せん断力の3〜5%に相当する引張りの拘束力の発生を確認できた。また、仕口部の繰り返しによるはりの柱へのめり込み量をパイ型変位計で計測したが、その値は全水平変位から弾性変位、仕口部回転変位などを除いた値と一定の関係にあることも確認できた。これらの特性を基本にして、今後、仕口部の解析的な把握と検討に努めたい。
|