まず、液晶プロジェクターを中心とする映像装置および各種アングル等の材料による映写台、スクリーン等を組み合わせて、動的な立体映像を可能とした映像システムを製作し、現有の設備・備品を利用した音響システムを加え、映像システム、音響システムの2系統から空間・環境シミュレーターの製作を行った。さまざまな検討の結果、光学系としては、偏向フィルターの利用により、両眼視差に応じた左眼用・右眼用の映像をそれぞれの眼に別々に与える方式を採用したが、実験機器等の制約の条件から、立体視を再現するためには、1/2波長板の導入が必要であることが確認された。 次に、空間・環境シミュレーターで呈示する刺激に関する技術的問題あるいはシミュレーター内での視覚場(被験者とスクリーンの位置関係など)と音場の検討を行い、その結果、ビデオカメラ、マイクロホンの間隔などステレオ録画・録音の適切な方法を概ね把握できた。 最後に、各種空間・環境のビデオ画像を対象刺激とし、予備実験で選定した23形容詞対7段階のSD法、快適感・開放感2尺度のME法を用いた評価実験を行い、まず、立体視が両眼視差のみで行われることについての被験者の疲労の問題について検討を行い、限界点があることを確認した。また、現場実験、スライド実験等を並行して行い、空間・環境の再現性という観点から、マクロな評価構造上では本研究で製作した空間・環環シミュレーターが有効であることを確認した。一方、同時に細部についてはシミュレーターの適用限界に関する知見も得られた。 以上より、将来の大規模な装置化に向けての基礎的データが導出できたと考えられ、今後は、コンピュータグラフィクスなど適用を行い、事前に完成後の空間・環境の状態を予測し、影響の評価が可能なシミュレーション技術の確立に向けて研究を進めていく予定である。
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