本研究は、空気集熱式太陽熱暖房システムにおける球カプセル型潜熱蓄熱システムの最適設計を可能とするために、集熱器・蓄熱槽・ヒートポンプからなる太陽熱暖房システムに関してシステムシミュレーションを行い、蓄熱槽容量、風量、集熱器面積などの各種設計要因がシステム性能に及ぼす影響を分析したものである。 1.球カプセルに封入された潜熱蓄熱材(PCM)の伝熱モデル式を理論的に導き、各種実験結果から潜熱蓄熱槽の熱的動特性について検討した。潜熱蓄熱材の伝熱モデルに関して、カプセル内固相温度分布を一様温度分布あるいは線形温度分布と仮定した場合と、カプセル内部を準定常熱伝導と仮定した場合の伝熱モデルを検討した。そして、カプセル内部が全固相、全液相状態の場合について実験を行い、槽内体積熱伝達率と断面風量の関係を求めた。最後に、基本的な凝固・融解過程の実験結果とシミュレーションとの比較を行うと共に、伝熱モデルの妥当性について検討した。 2.潜熱蓄熱太陽熱暖房システムの性能評価のために、集熱器・潜熱蓄熱槽・ヒートポンプからなる比較的単純な空気集熱式太陽熱暖房システムを仮定して、冬期5日間システムシミュレーションを行い、顕熱蓄熱材との性能比較および蓄熱槽容量・相変化温度・蓄熱槽形状・集熱器面積・風量がシステムのエネルギー性能に及ぼす影響を検討した。重要な結果として、システム規模に応じた最適槽容量および最適風量が存在することを明らかにし、潜熱蓄熱の場合には槽容量が過大なときの大きい性能低下が見られるために、設計に際して特に注意が必要であることを示した。
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