研究概要 |
この研究の目的は,植栽の日射遮蔽効果を解析的に予測する方法を明らかにし,建築環境工学の分野での建物の省エネルギー設計に役立てることである。現在,植栽の日射遮蔽効果は実験的にしか予測できない。この研究では植栽の日射遮蔽効果を解析的に予測することにより,建物に入射する日射量を簡易に計算できるようにする。そのためには植栽の放射輸送モデルとその解法が必要である。この研究ではRossの植物群落内放射輸送モデルの信頼性の検証と建築環境工学の分野に適した解法を開発する。平成4年度で行った項目は以下の3項目である。(1)壁面に這った植物の日射遮蔽の簡易計算法を提案した。この簡易計算法ではRossの植物群落内放射輸送モデルをSchuster-Schwarzchild近似により放射フラックスを求める式に簡易化した。植物層の反射率と透過率の計算において,この解法と精緻解法とは良い一致を示した。植物層の反射率と透過率を求めるためには,この研究で提案した近似解法で十分であることを明らかにした。(2)この研究で提案した近似解法を用いて,壁体に入射する日射量が植栽の量や種類によってどの程度軽減されるかを実験の計算によって調べた。壁面は南面と西面を想定し,植栽による日射遮蔽は非常に効果的であることを数値的に明らかにした。(3)Rossの植物群落内放射輸送モデルは理論的に優れたものであるが,直達日射量を過少評価する危険性がある。この欠点がどの程度のものであるかを調べた。入手できる実験データを用いてモデルの有効性を調べた。結果はモデルの予測値と実験データとは良い一致を示した。モデルのもつ上記の欠点は実用上それほど問題が無いことを明らかにした。
|