昨年度の離散フーリエ変換を用いた計算においては、系の状態が急激に変化する場合、高調波の打ち切りに由来する振動が生じた。この振動は必ずしも小さいとは言えず、今年度はこの打ち切り誤差の程度を把握することを目的の一つとした。誤差の検討には正確解が、従って連続時間での正確な重み関数を求めること、又十分小さな差分刻みを用いた状態方程式に基づく解析を行うことが必要である。更に、連続時間の外界気象確率過程モデルも必要となる。今年度は、外気温と外気湿度の確率的変動を表現する連続時間の確率過程モデルを作成した。この確率過程モデルは、外気温と外気湿度との間の相関を考慮したものである。結露に対する吸放湿材の影響の検討を主たる対象とし、冬期のデータを整理した。また、連続時間の確率特性解析プログラムを作成し、この誤差の程度についての検討を行った。 更に、上で得られた外界気象の確率時系列モデルと離散フーリエ変換により得られる重み関数を利用して、外界条件が確率的に変動する場合の室温湿度・熱負荷の確率性状の解析を行った。昨年度は基礎的な検討に重点を置き単室のみの解析を行った。一方、住宅などの室温湿度には室相互間の換気が大きく影響するため、今年度はこれを考慮し、室相互間の換気が各室の温湿度に及ぼす影響についても検討した。重力換気による換気量を温度差のみの線形式で近似する方法を提案し、この方法が室内温湿度性状の解析あるいは熱負荷計算に対して十分な精度を有すること、室間の相互換気が室内温湿度変動に及ぼす影響の大きいことを明らかにした。
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