室内過渡音圧応答に法線微分形積分方程式(NDF)を用いた数値計算法を検討した結果、音源波形としては計算が容易でかつ精度も高い2次曲線を用いるのが妥当であること、各要素形状は偏平でないこと、要素寸法と時間ステップの比、即ちDELTAx/cDELTAtの値は通常の境界要素法で用いられている積分方程式(BF)による場合には2程度の小さな値を用いる必要があったのに対し、NDFでは20程度の大きな値でもかなりの反射次数まで発散せずに安定した解が得られることがわかった。このことは少ない要素数で高い周波数帯域まで計算することが可能で、NDFの大きな利点である。NDFを用いれば、DELTAx/cDELTAtの値にあまり左右されず15回程度の反射音まで精度良く計算可能であり、BFによる方法とは比較にならない高い精度と安定性をもった方法であると結論できる。 平成5年度は、上記知見の上に更に安定性と精度の高い数値解を得るため以下の検討を加えた。即ち、周期的定常応答計算において、境界要素法の欠点とされている内部固有周波数で一意な解が得られないという問題を克服するために提案されているBFとNDFを結合して解く方法を、過渡応答の場合にも適用することを試みた。周期的定常の場合には、結合のための定数は1/kにとるのが望ましいとされているから、このことは過渡応答の場合にはBFの積分方程式の時間微分形を用いることを意味する。計算を種々試みた結果、BFの時間微分形そのもののが、DELTAx/cDELTAtの値が小さい場合には安定性が増加したが、大きな値では安定性はあまり改善されなかったため、結合した計算においても、BFの時間微分形の特徴がそのまま結果に表れ、NDFのみを単独で用いることが望ましいことが結論として得られた。
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