本研究は人体の熱収支式を用いて空調空間の最適温湿度条件を求める方法を開発することを目的としているが、この場合、各種作業時の代謝熱量の資料が不十分であるため、直接的には各種作業時の代謝熱量の予測方法を確立することを目的としている。 平成4年度は大学の教務、建設会社及びスポーツ施設の各事務作業のビデオ撮影を行い、動作分析を行った。さらに、これらの事務作業に現れる各種動作の代謝熱量を測定すると共に、動作開始時及び動作停止時の代謝熱量の変化の実験式を求めた。 実際の事務作業では代謝熱量が動作に対応する最大値に到達する前に次の動作に移行することが頻繁に起こるので、このような場合の代謝熱量の変化の予測式を考えた。 平成5年度は、まず沼尻博士の測定した各種動作の代謝熱量と本研究室で測定した値との比較を行い、両者がほぼ同じであることを得た。次に実験装置の信頼性を検討し、誤差が3%以下であることを確認した。 次にモデル作業を考え、代謝熱量の測定値と予測値との比較を行い、両者がきわめて良い一致をしていることを確認し、代謝熱量の予測方法が確立できた。 予測の対象範囲を広げるため、スポーツとしてエアロビクスと卓球を、また、生産施設作業として乳業会社とハム製造工場を取り上げ、動作分析と代謝熱量の測定を行うとともに機械効率についても検討した。 その結果、スポーツにおいては競技者と非競技者とでは同一動作で代謝熱量に2METの差があることが確認された。また、生産施設の作業において求めた機械効率は一般には6%程度で小さく代謝熱量予測時には無視しても差し支えない程度であることも確認した。
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