本研究は、茅葺き民家の保存と活用を計るうえでの問題点を探るために、白川郷の合掌造り民家を対象に、その増改築の実態調査と、住民の意識調査を行なったものである。 研究の前提として、まず第1章で、白川郷における合掌造り民家の残存状況と転用およぴ村内外への移築の実態を把握した。その結果昭和30年代から50年代にかけて37棟の合掌造り民家が村外に転用されていることが明らかとなった。第2章では合掌造り民家の住み方と増改築の実態を調査し、民宿を営むものと専用住宅に分けて分析を行なった結果、民宿においては、別棟を増築して生活している実態が明らかとなった。第3章では合掌造りの住人に対して、合掌造りでの生活と合掌造り集落の観光、及ぴ合掌造り民家の保存に関してアンケート調査を行い、それらに対する住民の意識を調べた。その結果次のような点が明らかとなった。 1。荻町への定住の意向は総じて強いが、合掌造りに住みつずけることに対しては、民宿を営む家でその意向が強く、専用住宅ではきわめて薄いという対照的な傾向を示した 2。合掌造りの居住性については、民宿を営む家では評価が高く、専用住宅では低いという傾向を示した。これは民宿では別棟を生活空間としていることと関係している。 3。合掌造りへの愛着や保存の意欲についても民宿を営む家では強く、専用住宅では弱いという対照的な傾向を示した。 4。茅葺きのユイについても、民宿を営む家で存続を望む傾向が強い。 以上をまとめると専用住宅に関しては、現代的な改造モデルの提案が求められ、民宿においては合掌造り本来の構造と空間に戻した改造方法が望まれているといえる。最後に研究のまとめとして合掌造りの現代生活空間への改造案を作成した。
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