わが国における先駆的な事例として、飛騨古川(岐阜)、足助(愛知)、村上(新潟)におけるまちづくりの活動を概観し、これを前年度の米国英国と同様のマトリックスによって整理した。 日本におけるシビック・トラスト類似団体である財団法人日本ナショナル・トラストの活動とその論理を整理し、これを米英の事例と比較し、その特徴を明らかにした。 日本の都市計画制度上、こうした環境デザイン活動が芽生えにくかった原因として、税制上の問題、公益法人の設立のむずかしさ、主務官庁制の問題を指摘した。さらに、上記の萌芽的事例がどのようにしてこうした閉塞状況を打破したかを考察した。 これらをとおして今後の日本ならびにアジアにおける都市計画システムならびにシビック・トラスト型の環境デザイン運動の在り方を展望し、地方分権と活動に積極性を与えるような情報公開制度、市民公益活動を支援するような民間組織の在り方を提案した。 また、こんにち各地で提案されている景観関連の条例を検討し、特に1980年代後半以降、景観を新たな都市計画課題として捉え、積極的に対応策を検討してゆこうとしている自治体が増加していること、環境を広く捉えるひとつの手立てとして景観に着目しつつあることを指摘した。
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