本年度の研究によってわが国にシビック・トラスト型の環境デザイン手法を定着させるためには以下の 点の課題があることが明らかになった。 第一に、活動を担う「市民」が育成されなければならないこと。そのためには学童期からの環境教育が重要である。 第二に、環境デザイン運動を担う民間の非営利組織が公益的な法人として認知される制度が充実するべきであること。特にわが国の民法法人である財団法人と社団法人は民間の柔軟な活動を支える制度としては硬直化しすぎている。また、公益性を客観的に判定する英国のチャリティ委員会のような役割の組織が必要である。 第三に、寄付金税制を改善する必要がある。特に個人の寄付金控除に対する現状の制度では優遇措置があまりにも乏しいといえる。また、政治献金を別枠にする必要がある。 第四に、補助金のシステムがより柔軟に、民間の非営利活動にまでゆきわたるようにすることが望ましい。現在の活動費助成のあり方もより具体的なプロジェクト単位の補助金へと衣替えする必要があろう。 第五に、公益活動と収益活動との両方の側面を兼ね備えたまちづくり会社のような組織形態の幅広い可能性を追究する必要がある。現在のまちづくり会社は中小企業事業団の補助制度とつながっているので、地方都市の従来型の商店街の再活性化プロジェクトに利用される場合に限定されているが、より広く市民による環境デザイン活動全般に拡げる必要がある。 第六に、運動が活性化するように仕組んだ情報公開制度が望まれる。 最終的には大陸型の自治制度の現状と英米型を目指す市民運動の方向とのすり合わせがどのような点で可能かという問題に帰着するといえる。
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