平成4年度の図書館2施設、病院2施設の探索行動実験の結果(各施設10人)から次のような知見が得られた。 1.図書館と病院の比較を行うと、図書館は病院に較べて比較的規模が小さく、かつ空間がオープンなため、分り易いと感じて迷い、病院は複雑と感じて慎重に行動する結果迷う人が少ない。このことから、「規模と空間に対するイメージから経路探索方法が選択される」ことが分る。 2.図書館の本の探索行動実験の結果から、図書館は本を探す施設でありながら、本の探索に関する情報提供に不備があり、通常の施設の室案内情報提供の方法となっている問題点が明らかとなった。 3.図書館同士の比較では、図書館の中央部に見通しの良い吹抜けを持った場合は、良く見えることと形態情報が活用され迷いが少なく、玄関部に吹抜けを持つ見通しの狭い図書館では、サイン情報を活用するしかなく、しかも分からず迷っており、見通しの良さと形態情報の有効性が明らかになった。 4.病院同士の比較では、全般に迷いが少ないが、病院の空間構成と情報の配置で違いが見られ、迷いがより少ない病院では、特定の情報の活用が見られ、迷いの若干多い病院では多様な情報の活用への分散が見られる。これは誘導する強力な情報の有無 空間の整合の度合いから生じたと考えられる。 5.今回の実験では2階の探索目的室や目的の本が設定されているが、病院でも図書館でも、2階の情報を1階でどう提供するかに課題があり、病院の場合に1階で得た情報は階段室を上って2階に出ると新たな手がかりが必要なこと、図書館では吹抜けを通して2階の情報が見えても認識していない等の問題点があることが明らかになった。
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