研究概要 |
本研究は,住民合意をふまえない建築協定制度の諸問題や協定の定着状況を把握した上で,建築協定を有効に活用するための方策や合意形成活動などの手法を明らかにするものである。昨年度は建築協定制度の運用状況や建築協定地区の実例調査について重点的に行い,戸建て住宅地における環境デザインの特性と協定内容との対応実態を分析したが,本年度に明らかにした研究内容は,主として次のとおりである。1.複合多機能化が進むニュータウンにおいて,住環境マネージメントを円滑にするための手法を検討するために,多摩ニュータウンを事例に取り上げて手法を整理し,建築協定の運用実態と役割を明確にした。2.戸建て住宅地の外部空間における環境デザインの住環境保全に与える影響をアンケート調査により調査・分析した(4地区,113戸)。調査項目は,主として(1)環境デザインに対する評価,(2)住環境の保全状況,(3)建築協定に対する意識としたが,住環境保全行為には環境デザインに対する住民の評価と,空間構成による領域形成との影響があることがわかった。3.戦前開発の郊外住宅地を対象に,長期間にわたる住環境の形成過程を明らかにし,形成要因を分析した。東京と京阪神地域から22地区を選出し,開発経緯や住環境の現状,住民の取り組み実態などを明らかにした結果,住環境の形成過程は都市機能として見たときの都心度に大きな影響力があり,住環境の形成パターンは(1)都心型(変容停滞型,低数値終結型),(2)衛星都市型(山並型,横ばい型),(3)郊外型(下降型,無傾向型)に大別できることがわかった。4.都市計画法及び建築基準法の改正に伴う新しい用途地域制に対応した建築協定の運用方法を検討し,住民主体による協定運営体制を定着させるために有効な誘導的手法を考察した。
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