本研究は、住宅団地における住民同士の視覚的情報の相互作用を、プライバシーの侵害のようなネガテイブな側面と、防犯や子供の安全性のための住民相互の見張りのようなポジテイブな側面の両面から、適性な住棟配置のための計画支援ツールの有効性を示した。 (1)住宅団地の調査:住棟の形状・配置の異なる住宅団地を4ヶ所選定し、住宅団地の配置図、住棟立面図等の現況図を作成した。また、住民に対するアンケートを行った結果、圧迫感、プライバシーの感じ方に関して、個々の住戸周辺の状況や住棟配置を考える必要性が確認でき、安全性、防犯性は視線輻射量によって論じる妥当性が示された。 (2)視線輻射量計測プログラムの開発と適用:(1)で得た現況図からコンピュータ処理用のデータファイルを作成し、視線輻射量計測プログラムを開発して各住宅団地のアンケート調査を行なった地点における視線輻射量を求め、アンケート調査結果との対応関係から壁面の開口率、距離等のパラメータの重みを調整して回帰式を求めた。 (3)配置計画支援ツールの開発:市販のCADソフトと、視線輻射量計算プログラムをリンクし、任意の地点の視覚的相互作用(プライバシーと安全性)が予想出来るシステムを開発し、中・高層集合住宅においては、圧迫感、プライバシー感が、各種の説明変数により、よく記述しうることが明らかになった。 以上、集合住宅における圧迫感、プライバシー感、防犯・安全性について、視線輻射量を媒介として、適性な住棟配置を計画段階でチェック可能なシステムの有効性を示した。
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