平成4年度に調査した農村部と5年度の都市部との比較考察の結果は、以下の通りである。 (1)農村部・都市部いずれにおいても、住宅内において拠点の必要性を認め、拠点があるという拠点の存在が確認できた。 (2)拠点数としては1室拠点と2室拠点が主で、農村では1室拠点が中心で、都市では2室拠点が増え、1室拠点と近似した比率である。拠点が形成される主たる室は、居間・食事室・寝室・趣味室・その他で趣味室は都市に限って認められる。居間は拠点性が高い場合が多く、次いで寝室である。農村で拠点性が高いのは居間で、都市では寝室の拠点性が高くなる傾向にある。 (3)拠点のとられ方は、〔公〕室型と〔公+私〕室型が中心で、農村では前者が主なタイプで、都市では両タイプの比率が近似している。また同居では〔公+私〕室型の比率が高く、別居では〔公〕室型の割合が高くなる。 (4)農村では高齢期になっても農業従事がなされ、住宅内の生活スタイルがアクティブになりにくく、居間を中心とした〔公〕室型が主となり、私的拠点は同居にみられるのみで、拠点性も低い。これに対し、都市ではアクティブな生活スタイルがとられ、公室拠点のほかに私室拠点が形成される比率が高く、別居についてもみられ、その拠点性も高い。 (5)今後は農村においても、また都市では一層、公室拠点に対し私室拠点の確保が増え、拠点型としては〔公〕室型に対し〔公+私〕室型が増えることが予測される。その背景には、親子関係、とくに同居の場合にはそのことと密接な関連がある。 以上から、今後の高齢期の住宅づくり、既存住宅の活用を考える際の一つの基礎的な手掛かりをうることができたと考える。
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