本年度実施した研究調査は次の通りである。(1)集合住宅の衛生管理従事者に対するヒヤリング、これは管理会社社員、設備清掃会社職員、設備診断技術者、リフォーム会社社員を対象とし、10人からヒヤリング結果を得た。(2)集合住宅の衛生管理と設備等の老朽化状況を把握するため、首都圏の分譲集合住宅管理組合220に郵送アンケート調査を行い、103の管理組合から回答を得た。(3)保健所に於けるマンションへの取り組みを把握するため、札幌、福島、大阪、神戸、福岡、東京、横浜の各地の保健所20ケ所を調査し、関連する資料を得た。 主な調査結果は以下の通りである。(1)については設計、管理の様々な情報を整理することができたが、働らく立場から設備の保守管理が様々な危険を伴うことが判明した。これら労働の場での事故は表面化いにくく、従って計画には反映されていない。設備診断事務が施工から独立しつつあるが、未だ住民からは診断の意義が理解されていないことも重要な指摘として残った。(2)の調査では40年代分譲用地で給排水の事故が急増しつつあり、大規模修繕が外壁から設備に移行しつつあることが判明した、設備は共用部分と専用部分がつながっているにもかかわらず、共用のみ管理組合で修理する場合が多く、従って大規模修繕後も事故は絶えない。専用部分は個人の責任となるが、共用部分の取り替えに比べ、極めて多額となるため、手をつけないで残されやすい。老朽化、スラム化防止のために、専用部分を含めた管理努力が今後一層必要となることが予想された。(3)については、保健所に於ける給水施設への立ち入り検査状況、苦情処理状況、市民への情報提供努力、マンション設備の建築確認時事前指導等の実態を調査した、事前指導を行っている保健所は、札幌市、福島県、文京区、杉並区、港区、足立区、横浜市であり、現在検討中の自治体は数ケ所ある.マンション管理は保健所の重要課題となった.
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