本年度の目的は、居住環境における高齢者のプライバシー欲求とプライバシー達成の状況をとらえる尺度を開発して、それを用いて居住環境におけるプライバシー欲求と関連する諸要因を明らかにすることである。 1.居住環境におけるプライバシー欲求尺度とプライバシー達成尺度の開発 「他人にわずらわされない自分だけの空間が必要だ」「気の合う人となら何時間でも一緒にいたい」等のプライバシー欲求に関わる項目およびプライバシー達成状態に関わる項目からなる試案を若年群に適用して、そのデータを因子分析した結果それぞれ62項目からなる尺度を得た。 この尺度を高齢者に適用して以下の結果を得た。 2.居住環境におけるプライバシーと建築クレームの関連性 プライバシー欲求得点、プライバシー達成得点、居住環境に対する不満や不便の訴えである建築クレーム得点の関連性を分析した。建築クレームが高い場合には、プライバシーへの不満が高いことがとらえられた。 3.プライバシー侵害が心身健康に及ぼす影響 50項目より構成されるストレス尺度パブリック・ヘルス・リサーチセンター版でとらえたストレス得点とプライバシー侵害程度との間に関連性がみられ、プライバシーの低下が心身健康にネガティブな影響を及ぼすことが明かとなった。 今回の資料は、今後高齢者施設におけるプライバシーを検討する際の基準値となるものである。
|