本研究では彩色・紋様の発達をみた地域を近畿地方とみて、そこに中心をおきながら、全国に散在する重要とみられる遺構について調査してきたが、本年度はその捕捉調査とまとめを行った。まとめにあたっては地域性と彩色年代に留意した。 幾内を地域別にみると、和歌山県下に濃厚に彩色・紋様の装飾を施した神社本殿が多く、これに隣接する大阪府南部、奈良県南部の紀の川筋の遺構も同様の傾向を示した。これに対して滋賀県下では室町時代より素木造の伝統が強く、その詳細は不明なから、軸部を丹塗とするものすら多くなく、日吉大社のように桜門等を丹塗とするものでも、本殿の素木造としている。極彩色を施すのは寛永年間の後半からである。 これに対して京都府下では御香宮・北野天満宮・与杼神社など、慶応年間後半の建物には極彩色が目立ち、近畿圏ではこの頃が彩色・紋様の装飾のピークをなしたものとみられる。 大阪府下で極彩色を施した本殿は泉南地域に顕著であるが、大きくみると、北部の遺構は保守的で、素木造のものも分布する。しかし慶応期の遺構には極彩色を施したものが存在する。なお、壁画については触れなかったが、桃山時代のものは、側面柱間二間を一画面として描くなどおおらかに描く。 全般的にみると、時代的いは慶応をピークとして華やかな彩色紋様が流行したとみられる。
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