1.文献調査による伝統的木造建築における構法の分類 (1)構造安定性について得られた総合的な知見 a.本堂形式:母屋に庇が取り付いているので、軒の出の支持は小屋組等の内部空間で充分処理できる。 b.塔形式:梁間に対し、軒の出が長く不安定に見えるが、軒を構成する部材が内外の二重井桁枠で固定され対称型を成してバランスをとっており、また柱間は短く単位柱にかかる荷重は少ない。 c.門形式:梁間に対し軒の出が長く、特に古代建築ではこれを支えるべき空間がとりにくい。また、桁行間が長く、単位柱にかかる荷重が大きいため、外方向への滑りだしと軒の垂下を生ずる。 (2)過去の水平力(地震・台風)の作用により倒壊した文化財建造物の被害例では、修理以前の破損状況からa.屋根重量と下部構造とのバランスの不均整b.貫の存在の有無c.地盤の選定の良否d.軒の垂下状態 などが被害を受ける要素となっていることが判明した。 2.屋根荷重伝達部の構造比較 (1)上記のうち、門形式について、屋根荷重により柱の廻りに生ずる曲げモーメントを計算し、荷重が伝達される部材の断面係数の総和で除し曲げ応力度を求めた。時代が下るとともに曲げ応力度は低くなり、荷重の流れが均整化されて安定した構造になってくることがわかった。 (2)次年度では、上記の知見を踏まえ、さらに各形式について構造計算による計量を進め、梁間・桁行に対する軒の出の比率、荷重の偏心の度合など構造的な安定性について比較検討を行いたい。
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