1.伝統的木造建築の水平力(地震・台風)による倒壊例とその原因 (1)倒壊事例の調査:報告書により判明するものとして、1)円覚寺舎利殿(1923年:地震・倒壊)2)丸岡城天守(1948年:地震・倒壊)3)護国院多宝塔(1950年:台風・二重落下)4)善光寺山門(1959年:台風・倒壊)5)生和神社本殿(1961年:台風・倒壊)6)清水寺釈迦堂(1972年:集中豪雨・倒壊)7)厳島神社能舞台(1991年:台風・倒壊)がある。(2)倒壊原因の究明:1)地盤・基礎の選定の良否 2)軒の垂下状態 3)主要部材(貫)の破損の有無 4)屋根荷重に対する下部構造のバランスの不均整 が原因となっている。 2.伝統的木造建築の形式分類と構造比較 梁間・桁行に対する軒の出の関係は重要であり、本堂・塔・門形式を比較してみて次のことが判明した。 1)本堂形式では母屋に庇がとりついているので、軒の出の支持は小屋組等の内部空間で充分に処理できる。 2)塔形式では梁間に対し、軒の出が長く不安定似見えるが、軒を構成する部材が内外の二重井桁枠で固定され対称型を成してバランスをとっており、また柱間は短く、単位柱にかかる荷重は少ない。 3)門形式では梁間に対し軒の出が長く、特に古代建築ではこれを支えるべき内部空間がとりにくい。また、桁行間が長く、単位柱にかかる荷重が大きいため、外方向へのすべり出しと軒の垂れ下がりを生ずる。 3.屋根荷重伝達部の構造比較について 構造的な特徴を踏まえ、古代の門建築について、創建年代・規模・本瓦葺という条件から、平城宮朱雀門復原案と現存する大規模二重門として東福寺三門と南禅寺三門の3例をとり構造比較を行った。3つの門について柱軸のまわりに生じる曲げモーメントを荷重が伝達される部材の断面係数の総和で除し、曲げ応力度を求めた。曲げ応力度は時代が下がるにつれて低い値となっていくことが判った。
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