研究概要 |
補助金申請時の研究実施計画のうち、(1)の試料採取装置の軽量化は、架台三脚の改良で十分対応できた。(2)の分析時の妨害物質の除去は、ロータリーエバポレータの管理の改善で目的を達成した。(3)のベンゾ(a)ピレン(BaP)の実態調査は、鉱山の現場で、LHD(180〓、13,000cc)を実際の操業条件に近い状態で運転し、BaP濃度の変動を測定した。即ち、LHDの運搬距離約150m、坑井で鉱石をバケットに積み込み、方向転換の上、シュート投入口まで積荷で走行、投入して方向転換、元の位置まで空荷で走行するサイクルである。この間に、試料採取地点を5ケ所設け、各点でハイボリューム・エア・サンプラーにより被検空気を連続して採取した。試料はそのまま持ち返り、溶媒抽出でBaPフラクションを取り出し、高速液体クロマトグラフにより同定、定量した。その結果、BaPの濃度は、LHDの運転開始直後より増加し始めるが、12分後に最高値に達した後は、除々に最高値から低下して、30分も経過すれば最高値の25%程度のレベルに落ちつくことが明らかとなった。このことは、始動時の際の排ガスに多量のBaPが含まれており、約30分を経過して通常運転の状態になると、BaPの発生量は減少することを意味する。したがって、BaPの暴露量を減らすには、作業区域内でのLHDの始動を止め、別の通気系統内にピットを設けてそこで始動運転を行い、通常運転に入いってから作業区域内に移動する作業標準に改めるならば、良好な作業環境を維持できることがわかった。(4)については、LHD装備の除じん装置は、BaPの付着している「すす」を有効に除去しており、普通述べられているベンチュリースクラバーの効率を発揮していると推定される結果も得られたが、試料数が少ないので継続して試料数を増やす予定である。
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