F-K法(周波数ー波数解析法)は、電子計算機の発展にともない、近年解析がなされるようになった手法であり、我国では周期2〜10秒といった長周期微動を対象に、深部速度構造の解析が試みられているのみである。地熱微動は2〜15Hzの短周期微動であり、短周期微動を対象とした検討はほとんど行われていない。そこで、今年度は測定及び解析手法の確立のため、モデル波による解析等からF-K法を短周期微動に適用するための基礎的検討を行うと共に、これまでの予備調査により地熱微動と周波帯域が等しくかつ振動源の位置が把握されている秋田市茨島工業地帯周辺の4ケ所の測点で、固有周期1秒の上下動地震計6台によるアレイ観測を行い、微動の到来方向および見掛位相速度の解析を行った。また、ボーリング資料の解析から浅部地下構造が把握されている盛岡市域の地下速度構造を異にする5ケ所の測点および北上市工業団地で同様のアレイ観測を行い、理論分散曲線との対比から浅部地下構造の解析を行った。その結果、以下のことが明らかになった。 1)測定における適切な地震計間隔の組合せおよび解析に際しての波数のとり方が示された。 2)短周期微動におけるF-Kパワースペクトルの解析にはMLMよりBFMが適切である。 3)精度の良い解析には、当該周波数帯にパワーの大きい入力が必要であり、工場振動などのような定常的振動も入力源として有効である。 4)工場周辺における微動の到来方向は、工場群の方向と一致し、都市近効での到来方向は幹線道路の方向と整合する。また、解析された浅部地下構造はボーリング資料と整合する。 すなわち、F-K法による微動の到来方向および見掛位相速度は、短周期微動を対象に解析しうることが示された。
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