本研究は、葛根田地熱地域で存在が把握された地熱活動に関連する微小振動いわゆる地熱微動の特性を明らかにする目的で、多点同時観測記録から微動の到来方向および見掛け位相速度の解析を行うための基礎的検討を行と共に、その結果を踏まえて、葛根田および八幡平地熱地域で調査・解析を行ったものである。研究の成果は以下のように要約される。 1、従来、周期2〜10秒といった長周期微動を対象として解析が行われている周波数-波数解析法(F-K法)を短周期微動に適用するため、微動特性および地下構造が把握されつつある秋田市・盛岡市等で、上下動地震計6台によるアレイ観測を行い、基礎的検討を行った。そして、測定における適切な地震計間隔の組み合わせ、解析に際しての適切な波数の取り方を明らかにし、F-kパワースペクトルの解析にはBFMが適当でること、精度良い解析には当該周波数帯にパワーの大きな入力が必要であり、工場振動のような定常的は入力源として有効である事等を示した。 2、上記の基礎的検討を踏まえて、葛根田地熱地域および八幡平東部地域で、上下動地震計3台あるいは6台による観測を行った。葛根田地熱地域では、微動は地熱貯留層の存在する方向から到来する波が優勢であり、見掛け位相速度の分散がレイリー波の理論分散から説明しうること等から、地熱微動は貯留層から地下浅部に上昇した蒸気・熱水の活動に起因するもので、地下から実体波として伝播し地表で変換された表面波を多く含むものと推測された。八幡平地域では、見掛け位相速度の分散が見い出されたが、到来方向は多方面に分散しており、貯留層の存在が確認されていないことともあいまって、微動の特性についてはなお検討の余地が残された。
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