研究概要 |
この研究の目的は濃度マランゴニ効果の数式モデルを開発することである。このことについて昨年までに現象を表す基礎式を導いたこの式では、流体、界面活性剤それぞれの保存に加えて、流体運動時の力の釣り合いや界面活性剤の水表面における吸着反応速度過程などが考慮されている。 今年度はこの数式モデルの妥当性を調べるため、開水路層流流れにおける流出現象に着目して検討した。流出端近傍における表面加速現象が、界面弾性効果によりさらに加速される現象をトレーサを用いて可視化し、ビデオ画像解析により実験値を求めた。活性剤としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム,ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウムの3種を用いた。 実験の結果を先に開発した数式モデルによりシミュレーションして、このモデルが現象を再現し、有効なモデルであることを確認した。 特にこのモデル中に含まれる吸着反応速度過程のパラメータの値は物質に固有の値であると予想されているが、これまでに発表されている研究ではこの値を物性値として特定するまでに至っていない。これは実験と数値計算の困難性によるものである。 本研究では現象の特徴が現れやすく、また手法的にも比較的簡単な実験を繰り返し、同時に厳密な数値計算を行うことにより上記3種の活性剤に対してそれぞれ固有の値を推算することに成功した。このことはこの研究の大きな成果と考えられる。なお、当研究費で今年度に購入した表面張力計は、界面活性剤の濃度と表面張力との関係を求める為に利用した。この関係が本研究の最も基本となる実験データである。 今後の課題としては、いろいろな表面弾性現象に対してここで導いた数式モデルを用いた解析を行うこと、多くの種類の界面活性剤を用いて実験を行い、それぞれの活性剤の吸着反応に対して考察を進める事である。
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