研究概要 |
本研究では濃度マランゴニ効果を表す数式モデルを開発することを目的としている。濃度マランゴニ効果とは、界面活性剤の水表面における濃度差により生じた表面張力差が引き起こす現象の総称である。 この現象は水汚染、気液界面での物質移動あるいは浮遊選別など工学的にも様ざまな事項と関連が深い。 それにもかかわらず現象が複雑なために今日まで余り調べられていない。 本研究ではまず現象を記述する一般的な数式モデルを開発した。この数式モデルでは流体の質量、運動量の保存則の他に、活性剤のバルク流体中および水表面における保存則が考慮されている。また、水表面での活性剤の吸着にはLangmuir型の式を修正して用いている。そして、流下方向の表面張力勾配が流体運動の境界条件として作用する。 平成4年度に引きつずき、5年度も本研究で開発した数式モデルの妥当性の検討を行った。非常に浅い水深の開水路からの流出に伴う表面加速現象をトレサー法により測定した。用いた界面活性剤はSDBS(CH_3(CH_2)_<11>C_6H_4-SO_3Na,分子量348.48),SDS(CH_3(CH_2)_<11>-0SO_3Na,分子量288.38),およびSTDS(CH_3(CH_2)_<13>-OSO_3Na、分子量316.44)である。 数式モデルの数値解は実験値を再現し、このモデルの妥当性が示された。ただし、計算開始時点での初期条件の設定にはなお検討の余地が残されている。また、界面活性剤の吸、脱着過程を正確に把握することがこのモデル完成のために不可欠であることが判明した。 そこで、Langmuir型トラフを作成して界面活性剤水溶液の表面の伸縮に伴う表面張力の時間的変化を測定した。そして、その結果を本研究で用いた理論を応用して解析した。その結果、計算値のほうがやや早い挙動を示した。この傾向はこれまでに他の界面活性剤について報告されている事と一致するが、その原因は不明である。今後は界面活性剤の吸着反応速度過程についてさらに検討する必要が有る。
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