研究概要 |
メカニカルアロイング(MA)法はアモルファス、準結晶や非平衡結晶を作製するために広く利用され始めている。しかし、その機構解明のために、原子レベルならびに電子物性の観点からの研究は非常に少ないのが現状である。本研究ではMAによる原子レベルの混合過程を原子配列の見地からまた原子同士の結合を見るために電子構造の観点から詳細に追及することを目的とする。さらにこれらの混合過程がそのおかれた環境(雰囲気、温度、投入エネルギー)によってどのように変わっていくかを明らかにすることももう一つの目的である。 対象とした試料は混合エンタルピーが負の混合系ならびに混合エンタルピーが正の非混合系のものである。特に、本研究において非混合系のCu-Ta系のおいてもMAによってアモルファス化することが明らかにされた。そのアモルファス状態における原子構造は混合系のNi-Ta系のそれと比較した結果、非常に類似していることが明らかになった。また電子状態においても、非混合系においても原子レベルまで強制的に混合されると異なる原子種同士で混合系と同じ様な化学結合が生じていることが明らかとなった。窒素雰囲気下におけるMAにおいてはCr-Fe,Cr系においてアモルファス化が確認されるとともに窒素原子は6配位の空間にアモルファスを安定させながら存在することが明らかとなった。また、非平衡系のCu-V系においても窒素雰囲気下のMAによってアモルファス化することが明らかとなった。アモルファス化は結晶化温度以下であれば環境温度を上げた方が速いこと、また投入エネルギーを大きくすることによって目的の状態に容易に到達することが明確となった。
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