シリサイドはLSIの電極として重要な役割を果たしているばかりでなく、シリサイドの形成・成長過程は学術的にも興味深い現象を示すので金属薄膜/Si間の反応に関する研究は数多く行われている。本研究の目的は、バルク金属/Si拡散対を用いてシリサイドの形成・成長過程を調べバルク試料と薄膜試料における拡散挙動の相違を明らかにすることにある。 昨年度行ったNi-Si系におけるバルク拡散対内でのシリサイドの形成に関する研究では、Ni_2Siの成長速度は薄膜拡散対のそれに比べ10^3〜10^4小さく薄膜拡散ではシリサイドの爆発的成長(explosive silicidation)が示唆された。しかし、バルク拡散対と薄膜拡散対ではNi_2Siに隣接する相が異なり、隣接相が異なれば成長速度も異なる。そこで両者の相違を議論するため成長速度よりも普遍的な拡散係数を算出し比較したところ両者に顕著な相違は観察されなかった。 Ni-Si系におけるこの結果を踏まえ、本年度はPt-Si系、Ti-Si系においてシリサイドの形成順、成長速度、相互拡散係数の決定を行った。Pt-Si系では673Kから923Kまでの5種類の温度、Ti-Si系では973Kから1123Kまでの4種類の温度で実験を行った。Pt-Si系では温度によって異なるが温度が上昇するに伴って拡散層は2相〜5相、Ti-Si系では2相〜4相のシリサイドが観察され相の形成に順序がある。Ti-Si系では薄膜拡散対内での相成長速度が決定されていないのでバルク拡散対との比較はできなかった。Pt-Si系ではPt_2SiとPtSiの成長速度が決定されている。そこでバルク拡散対においてもこれらの成長速度を決定し薄膜のそれと比較した。また、両拡散対について成長速度をもとに俣野法を拡張したHeumann法で相互拡散係数を決定した。この結果、バルク拡散の結果はPtを蒸着するときの真空度の最も悪い薄膜拡散の結果と殆ど一致した。これはバルク拡散対と薄膜拡散対に差異のないことを明らかとしたNi-Si系で得られた結果を支持している。
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