LSI作成時に重要であるシリコンと金属間の反応をバルク拡散対を用いて調べた。平成4年度のNiシリサイド、平成5年度のPtシリサイドおよびTiシリサイドに引き続き、Ptシリサイド、Tiシリサイド、Moシリサイドの成長挙動について調べた。 蒸着金属薄膜は一般に欠陥が多く結晶粒が小さいため、高速拡散が支配的であり、バルク拡散より相成長速度が速いと考えられている。Ni-Siバルク拡散対に形成されたNi_2Siの相形成速度は薄膜拡散の10^<-2>〜10^<-3>であり薄膜拡散での高速拡散を予測させたが、相形成速度は隣接する相の種類に依存して異なることを考慮して相互拡散係数で比較したところ同一アレニウス直線で整理できた。このことは薄膜拡散とバルク拡散では差異のないことを示唆している。この結果をもとにPtシリサイドでも相互拡散係数を比較したところ両者の拡散で差異は見られなかった。粒界と相厚の間でスケーリング則が成立している可能性が示唆される。 引き続き行われたTiシリサイドに関する研究では用いたチタンの純度が99.5%と99.99%とではTiSi_2の成長速度が著しく異なり、Ti中の酸素が成長速度に影響を与えていることが示唆された。同様の結果は薄膜拡散対を用いたPtシリサイドにおいても得られており、シリコン化合物では拡散相中の酸素が相成長速度に大きな影響を与える可能性がある。酸素のこの様な影響は金属同士の拡散ではこれまでに報告例が無く、シリサイドの形成・成長挙動における特徴と考えられる。この点について更に詳細な研究が必要である。 バルク拡散対内ではMoシリサイドは1000℃以上で潜伏期間を経て形成される。潜伏期間の存在は酸化膜など表面状態に起因しており、実験の困難さが伴うことが明らかとなった。
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