研究概要 |
砒素,アンチモンは化合物半導体成分として注目されているが,素材生産工程で発生する工場スクラップ,使用済みスクラップの増加が予想され,環境問題を起こす可能性がある.また種々の有価金属が含まれる製錬ダスト,ドロスにも砒素,アンチモンが濃縮される.これ等の有価金属を回収する乾式処理工程では金属鉛とスパイスの2相平衡が見られる.そこでプロセス中の各成分の挙動を明らかにするために本年度は砒素,アンチモンを含む多元系の2液相分離範囲を,処理温度に近い1200℃で決定する実験を行い次のような結果を得た. 1.GaAs,InSbの処理のように砒素とアンチモンが共存する場合が多い.Pb-Fe-As-Sb 4元系の2液相分離範囲は,Pb-Fe-AsおよびPb-Fe-Sb各3元系と同様に広範囲にわたりFe-As-SbスパイスとPb-Sb硬鉛の2相に分離する.すなわち,砒素は鉛相への溶解度が非常に小さくスパイス相へ濃縮され,アンチモンは両相に分配され,砒素とアンチモンをある程度分離することが可能であることを示している. 2 スクラップ,ドロスには大量の銅が関係することからPb-Fe-Cu-Sb 4元系の実験を行った.基本のPb-Fe-Sb系スパイス中の鉄の20%以上を銅で置換すると,鉛とスパイスの2相共存は消滅して均一相となる.反対にPb-Cu-Sb系に鉄を添加しスパイス中銅の約10%を鉄で置換すると固体鉄飽和となり,溶融鉛,スパイスとの3相共存となる.すなわち銅,鉄が共存するアンチモン系では溶融金属鉛を用いて有価金属を抽出する乾式の回収プロセスは,できないことを初めて明らかにした.それ故,原料中に大量の銅が共存する時には,予め別の工程で銅を除去し,鉄系スパイスを用いて処理するプロセスが効果的であるものと推察される.
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