研究概要 |
複雑硫化鉱の製錬で発生するダストおよびドロス,あるいは化合物半導体の素材製造工程および使用済み半導体スクラップ等には砒素,アンチモンと同時に種々の有価金属が含まれる.これを金属鉛で回収するプロセスに関する基礎データを得るために昨年度の相平衡に関する実験に引き続き,本年度はPb-Fe-As3元系の溶融鉛-スパイス間の微量成分の分配について実験を行い次のような結果を得た.なお分配係数は次の定義による.L=[mass%X in speiss/mass%X in Pb] 1.ドロスに鉛と共存する銅は微量含まれる時の分配係数がほぼ1となるものの,大量に共存する場合にはスパイス中濃度が鉛の10倍以上となり,鉛による回収効率が低下すると同時に鉛相への砒素溶解が増大し,有価金属と砒素の分離,回収が悪くなる. 2.銀はスパイス相に比較し,鉛中の濃度が約30倍となるが銅の共存によりスパイスへの溶解度が急増する. 3.金の分配係数は約0.2で銀に比べスパイス損失が約5倍多くなり,さらに銅との共存によりこの値は増加する 4.アンチモンの分配係数は約2でスパイスだけには濃縮せず,鉛相にも多く溶解する.これはアンチモン濃度が増加してもほぼ同じである. 5.ガリウムは鉛による回収が困難であるが,インジウムは可能である. 6.鉄族元素のニッケル,コバルトの分配係数は100以上であり鉛による回収はできない. 7.その他にBi,Cd,Sn,Se,Te,Znに関する分配実験を行い,亜鉛は回収できないが,他の元素は鉛による回収が可能であることが明らかとなった. 8.分配係数に関する結果から,スパイス中の微量成分の活量係数を導出した.
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