本研究においては、精錬速度の増加、浴内の温度、濃度分布の均一化を図るため、偏心回転ノズルより水浴中へのガス吹込み実験を行った。偏心回転ノズルから吹込まれた気泡は水浴中に広く分散するため、効率的な撹拌混合が行われる。この結果を定量的に把握するため、トレーサーとしてKC1水溶液を浴中に添加し、電導度計を用いて水浴の電導度の経時変化を測定し、均一混合時間を測定した。また、浴内の分散気泡をビデオカメラにより撮影し、分散気泡の挙動を調べた。実験では、偏心ノズルの回転数、偏心度(ノズル偏心軸と水槽中心間の距離)、ガス吹込み流量を変化させた。 偏心回転ノズルからのガス吹込みにより、均一混合時間が短かくなり、浴の撹拌混合が強化されることが明らかになった。すなわち、偏心させない容器中心の回転ノズルからのガス吹込みに比較して、偏心させた回転ノズルからのガス吹込みでは均一混合時間が短かくなる。とくに、精錬反応装置におけるように、H/D(H:浴深さ、D:容器直径)が小さい場合には、ノズルの偏心度を大きくすることにより均一混合時間が著しく短かくなる。また、均一混合時間に対するノズルのガス吹込み口の孔数、方向の影響は小さかった。なお、ノズルの偏心度および回転数が大きくなると、浴の撹拌混合に対するノズル自身の回転による撹拌の寄与が吹込みガスによる撹拌のそれより大きいことが明らかになった。ノズルからの気泡生成に関しては、ガス流量が小さく、ノズル回転数が大きいときには気泡生成頻度が大きくなる傾向があるが、ガス流量が大きくなるとノズルの回転数により、気泡生成頻度はあまり変化しなかった。また、ノズルの偏心回転により気泡が浴中に広く分散することが明らかになった。現在、購入したpH計を用いてNaOH水溶液中へのCO_2ガスの吸収に関する予備実験を行っている。
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