本年度は、凝固・加工組織のパターン認識に用いるニューラルネットワークツールの構築を行ない、これによる鋳鉄の黒鉛形状判別を試みた。 構築したシステムでは、試料の金属顕微鏡画像をパーソナルコンピュータに取り込み、エンジニアリングワークステーション(EWS)で処理する。画像データはネットワークを経由してEWS上のハードディスクに保存され、EWSに構築されたニューラルネットワークツール(自己組織化プログラム、バックプロパゲーションプログラム、画像表示用ウインドウプログラム)により処理される。 研究の第一階段として、システムの一部を用いた鋳鉄黒鉛形状(片状黒鉛、球状黒鉛)の判別を行なった。その結果、画像をそのまま入力し、学習する方法では、適切な判別が不可能である事が明かとなった。そこで、画像の局所的特徴を抽出し、特徴分布を入力とする方法を試みた。 ここでは、いくつかの教師画像の3X3画素小領域を入力ベクトルとし、自己組織化アルゴリズムによる特徴ベクトル抽出を行なった。そして、各教師画像の小領域画像ベクトルに最も近い特徴ベクトルを抽出し、画像全体に対する特徴ベクトルヒストグラムを作成した。これを入力として、ニューラルネットワークをバックプロパゲーション法により学習させた。その後、テスト画像データに対しても同様の処理により入力データを作成し、黒鉛形状判別テストを行なった。その結果、97%の正答率を得る事が出来た。 これらの成果は研究論文として「鋳物」誌に投稿、掲載された。
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