昨年度は、ニューラルネットワークの材料組織パターン認識システムを構築し、球状黒鉛と片状黒鉛の識別を行った。そこでは、入力画像の局所的特徴を抽出し、これを学習することにより黒鉛形状を判別した。しかし、材料組織の識別では最適な観察倍率と入力領域の決定が基本的重要性を持ち、その最適値は一定ではないという困難があった。 そこで本年度は昨年度のシステムを改良し、最適観察倍率、観察領域の問題を分解能の異なる複数の画像を入力データとすることにより克服した。このシステムでは、粒子と基地を同列のものとして扱うことが出来るほか、多少の画像ノイズや情報の欠落にもさほど影響を受けない識別が可能であった。このような性能は、自己組織化した参照ベクトルにより分類した画像の局所的特徴量分布と、異なる分解能の画像における局所的特徴量分布の相対変化を組み合わせて学習することにより達成された。 本システムを用いて、粒子画像分類の例として鋳鉄の黒鉛形状判別、領域パターン分類として結晶粒度判定を行ったところ、黒鉛形状判別では95%以上の正答率を、また、結晶粒度判定では粒度0.5の許容範囲で98%以上の正答率を得ることが出来た。 以上の成果は、国際会議COMMP'93で報告したほか、現在「鉄と鋼」に研究論文として投稿中である。
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