メカニカルグラインディングをした銅ー鉛合金粉の焼結機構を明らかにするために、粒子サイズを3水準に分級した水アトマイズ粉を用いて焼結に伴う組織変化および収縮挙動を調べた。定速加熱熱膨張測定によると、粒子サイズの減少に伴い膨張収縮の変化はメカニカルグラインディング粉の焼結時の変化に近ずくことが認められ、粗い粒子では単調な膨張のみが、他方、粒子が細かくなるに従い、673Kの鉛の融点近傍および973K以上の温度で2つの膨張の山が生じる。このことは、単調膨張した粗い粒子をメカニカルグラインディングで粉砕し同様に焼結を行なうと膨張曲線に同じような山が認められることから、粉体粒子の大きさ、即ち粉体粒子の組織の粗度が焼結挙動に対して影響していることを示唆している。973から1073Kの温度範囲における等温焼結時の膨張ー収縮の変化はメカニカルグラインディング粉の場合と同類であるが、その速度は著しく減少した。 熱膨張測定結果に基ずき焼結時間に伴う組織変化を観察した。個々の粉末粒子の組織は、銅およびデンドライト粒界に偏析した鉛からなり、焼結の進行に従い、デンドライトの形状が崩れ鉛の凝集と銅の粗大化が進行していくのが観察されたが、この過程で個々の粒子の結合が同時に進むことが認められた。等温膨張曲線と対応させると、銅粒子の粗大化は膨張過程では起きず、収縮過程で起きることが明らかにされた。また焼結時間に伴う銅粒子サイズを線分横断法により計測した結果、ほぼ時間の3乗則に従って粗大化する事が示された。このときの粗大化速度定数のアレニウス・プロットから活性化エネルギーをもとめると、銅の自己拡散のための値の約1/3程度であり、メカニカルグラインディング粉の結果とは著しく異なる結果が得られた。
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