高圧鋳造と熱間押出によって作製した、SiCウィスカーで強化したアルミニウム合金複合材料においては、マトリックスに微細結晶粒組織が押出時に導入されており、そのため高温強度の低下と高温延性の増大が起こる。極端な場合には、このようにして作製された複合材料において超塑性の発現が得られている。高温域での低強度と高延性は、熱間加工プロセスにおいては有益な特性であるが、材料の使用段階においては高温での高い強度が望ましいことは言うまでもない。そこで、高圧鋳造と熱間押出によりSiCw/6061Al合金複合材料を作製し、一方向焼鈍を行ってマトリックスを粗大伸長粒組織に変えることにより、高温強度の向上を図った。 MA法による粒子分散粉末冶金材料とは異なり、複合材料においては一方向焼鈍によりマトリックスに粗大粒組織が得られた。これは、前者ではきわめて微細な分散粒子が結晶粒界や亜結晶粒界の移動を抑制する効果が大きいのに対し、押出複合材料においては分散相は比較的粗くて再結晶粒が成長粗大化しやすいためと考えられる。しかし、複合材料においても、873Kで5h相当の一方向焼鈍によりかなりの軟化が起こり、熱間押出時にマトリックスに形成される加工組織が常温強さへ大きく寄与していることがわかった。その結果、一方向焼鈍により、常温での引張強さはかなり低下し、強化材としてのSiCウィスカーの強さへの寄与は実際にはかなり低いことが示された。しかし一方向焼鈍によって、673Kでの高温引張強さはわずかではあるが増加することが明らかにされた。マトリックスの結晶粒を粗大化させることにより、高温変形における粒界すべりの寄与が抑制され、その結果高温強度の向上と高温延性の低下がもたらされることが示された。
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