本研究は、熱分解法により、合金、セラミックスなどの表面にペロブスカイト型の導電性希土類複合酸化物[ABO_3:A=希土類、B=III価の遷移金属]を形成する方法を確立し、それらを酸化還元用の電極としても応用しようとするものである。われわれは、クロム酸をベースとした水溶液から、比較的温和な条件で、La_<1-x>M_xBO_3[M=Ca or Sr、 B=Cr or Mn]という組成のペロスカイト型酸化物を合成する方法を見出し、電解析出法を併用して皮膜を形成する研究を行なってきた。本研究では、超音波により発生させた原料溶液の極微細なミストを熱分解しながら基盤上に堆積することにより、薄膜を形成する方法について検討を行なう。 今年度は、(1)超音波ミスト発生器→脱水用加熱部→熱分解部→基盤加熱部、よりなる薄膜形成装置の組立、(2)原料溶液組成とミスト組成との相関性の検討、(3)最も単純な組成のLaCrO_3皮膜の形成条件の検討、(4)LaCr_<1-y>Mn_yO_3皮膜の形成条件の検討、を計画し、現在までに以下の結果が得られた。(1)3つの加熱部の温度を、熱分解温度100〜1200℃、基盤温度200〜700℃と独立に制御でき、2×2cm^2程度の基盤まで作成可能な装置を組み上げた。(2)振動周波数1.7MHzの超音波振動子を用い、硝酸ランタンと三酸化クロムの等モル混合溶液から発生させたミストを補集して分析した結果、原溶液の組成通りのミストであることを確認した。(3)薄膜形成装置の組上げおよび熱分解温度の設定等の予備実験に時間を要したことから、とりあえず、基礎データを得るため、発生させたミストを石英基盤に直接噴射し、どのような皮膜が得られるか検討した。その結果、基盤温度400〜700℃で均質な黄色の皮膜が再現性良く形成できることが分った。これらの皮膜は明瞭なX線回折パターンを示したが、現在のところ既知の化合物のいずれとも同定できない。また、550℃以上では微弱ながらLaCrO_3のピークも現れた。いずれの皮膜も、大気中、800℃で1h焼鈍することによってLaCrO_3皮膜に転換した。焼鈍前後の皮膜のSEM観察も行なっている。(3)(4)に関しては、本格的な実験を開始したばかりであり、次年度も検討を続ける予定である。
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