研究概要 |
【1.純ニッケルの高温酸化】純鉄および純クロムと同様に,純ニッケルの高温酸化挙動を,純酸素および酸素・塩化水素混合ガス雰囲気中で調査した.純酸素雰囲気中では酸化増量が非常に小さく,緻密な酸化ニッケル(ll)皮膜が生成するのに対し,塩化水素を1%含む雰囲気中では試料の重量減少が観察され,その値は酸化時間とともに大きくなった.酸化後の試料の断面観察から表面には酸化ニッケル(ll)の層状スケールが成長し,塩化ニッケル(ll)と思われる揮発性生成物が反応管の排気部に堆積するのが観察された.以上の結果より,塩化水素を含む雰囲気中では腐食量は多くなり,塩化ニッケルの生成反応が腐食反応に大きく関与するため試料の重量減少および揮発性生成物が観察されたものと考えられる. 【2.鉄-クロム合金の高温酸化】(1)試料作製 実験に用いた純鉄および純クロムを適当量混合し,真空溶解することにより鉄-クロム二元系合金を作製した.クロム含有量は1%〜30%の範囲とした.(2)酸化実験 1と同様の酸化実験を行った.1%塩化水素雰囲気中においてもクロムを合金添加することによって純酸素雰囲気中と同様に酸化速度を抑制することができた.しかし,数%程度以下のクロム添加量では,逆に腐食減量は増加した.生成した皮膜の解析により,金属/皮膜界面にクロム成分の濃化が認められ,このクロムならびに鉄成分から構成される皮膜の内部保護性によって酸化が抑えられるものと考えた.以上の結果より,塩化水素を含む雰囲気中においてもクロムをある程度以上合金添加することによって腐食量を減少させることができると考えられる. 【3.まとめ】以上に述べたように本研究費による実験はとどこおりなく完了し,結果を日本金属学会誌等の学会論文誌に投稿中である.
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