研究概要 |
鋼板の電気亜鉛めっきや電気すずめっきなど硫酸電解浴では,これまで以上に省力化と製品の高品質化が要請され,技術的対策としては陽極を不溶性化することが最も効果が大である。その場合,電極が激しい腐食環境におかれ機能が損傷することがネックとなっている。チタンを基体とする従来からの白金被覆電極においては,損傷の原因のひとつとして,触媒層/チタン間におけるチタン基体の腐食が指摘されている。本研究は金属電極における基体の耐食性を向上させることを目的のひとつとしている。本年度は基体表面の高安定性と高導電性を有するセラミクスで被い,基体となる部分に十分な耐食性と導電性を確保するとともに,チタン基体/セラミクス層間とセラミクス層/触媒層間の密着性を向上させることを試みた。導電性と耐食性の両方に優れる物質として,高融点金属のシリサイドを用いることとした。約5種類のものを検討した結果,モリブデンジシリサイドおよびタングステンジシリサイドが今の目的に合致した特性をもつことが分った。これらは導電性が高いうえ,加熱処理による特性の低下が他より少いこと,バインダーとして用いる耐酸性ガラスとの熱膨張係数その他におけるマッチングに優れクラックの発生が少いことによる。加熱溶融しチタン上に被膜として得られたセラミクス層は厚さ約200μmで比抵抗は0.02Ωcmである。この値は鋼板の電気めっきにおける電流密度に対してオーム損は0.2mVを与え,全槽電圧に占める値は小さく無視できることが分った。セラミクス層に触媒をコートした後ガラス層を再び溶融させることで密着性と導電性をさらに向上させる方法を新たに考案した。再溶融前における触媒塗布回数は電極の有効稼動時間に対して最適値が在存することを明らかにした。
|