チタン基体酸化イリジウム(IrO_2-Ta_2O_5)コート電極は耐久性に乏しく鋼板めっき浴における対極として用いることができない。本研究は基体の防食と触媒の損耗防止の二つを行い、電極の耐久性を向上させることを目的とする。初年度では、基本チタンに導電性ガラスコートを行い、防食被膜としての適用性を検討した。フリットとシリサイドの粒度分布および配合比を調整することにより、抵抗が小さく電解電流印加時における膜内のオーム損が1.2mV以下となり、槽電圧に占める割合が無視できるガラス被膜を得た。沸騰する50%硫酸溶液中の浸漬試験では、従来型電極が2.5時間で腐食するのに対し、ガラスコート型電極は50時間の浸漬に対して電極有効面積が変化せず、基体の防食が十分であることが示された。初年度における以上の研究成果を踏まえ、最終年度では、ガラスコートチタンを基体として新しい無機添加剤を加えた触媒をコートした電極を作成し、有機物質を含む浴で定電流電解(1.5A/cm^2)による耐久試験を行った。耐久時間は有機物濃度の増加に対して対数グラフ上で直線を描いて減少するが、その勾配は両電極で等しい。耐久時間と塗布回数の間には、対数グラフ上で勾配の異なる直線関係が存在し、本研究で開発した新型電極の耐久性の高さが示された。さらにこれらの関数関係を用いれば、半年〜1年という長期的な耐久時間を予測することが可能である。以上に加えて、不溶性陽極の新しい利用法の検討も行った。回収亜鉛により硫酸浴に持ち込まれた塩化物イオンを不溶性電極により酸化・除去する方法について実験と概念設計とを行った。大面積の不溶性電極と循環式電解セルを組み合わせることで、短時間で効果的に除去できることを明らかにした。
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