研究概要 |
繊維に被覆された低破断歪材は負荷応力下で早期破断し,繊維表面にクラックを形成する。界面接着が強い場合は形成されたクラックは繊維に進展し,繊維強さを低下させる。このメカニズムでの繊維強度低下を防ぐには(a)界面接着を低下させること,(b)コーティング材として弾性率の低いものを選ぶことおよび(c)コーティング材に多重破断を生じさせること等が有効と考えられる。今年度は(b)および(c)が繊維強さに及ぼす影響について微視破壊力学的計算による評価を試みた。計算は、繊維およびコーティング層を多数の要素に分割し,応力の鈞合方程式からクラック面積がSおよび△Sの場合のコンプライアンスを求め,次いでコンプライアンスのクラック面積依存性よりエネルギー解放率を求める手法を適用した。繊維破壊はエネルギー解放率が臨界値に達したとき生じるものとした。その結果、コーティング層の多重破断が進み,クラック間距離が減少するにつれ繊維強度は上昇することを定量的に示すことができた。従来定性的な予想しかできなかった多重破断の効果をはじめて定量化した本研究成果は,複合材料研究,特に高性能複合材料の設計に大きな指針を与えるものである。現在本研究で開発した計算方法をさらに精密化し,かつコーティング材の強度分布を繰り込んで実用繊維の強度予測法を確立したいと研究を進めている。また同時に界面剥離を小規模に生じさせるとクラック先端のエネルギー解放率を大きく低下できることを最近見い出したので,次年度は界面の最適化にもとりくむ予定である。
|