本研究では、遷移金属化合物のTEA CO_2レーザーの照射によって遷移金属超微粒子の作製に成功し、作製した超微粒子の物性について調べた。 原料ガスとして鉄ペンタカルボニル(Fe(CO)_5)とコバルトトリカルボニルニトロシル(Co(CO)_3(NO))との二成分混合ガスを用いる。TEA CO_2レーザーからのパルスレーザー光(0.5J)を焦点距離7.5cmのレンズで集光して(焦点でのレーザーフルエンス約700J cm^<-2>)、照射容器に入れたFe(CO)_5とCo(CO)_3(NO)との混合ガスに照射した。照射により激しい爆音と共に焦点近傍でプラズマが発生し、超微粒子が生成して照射容器内を浮遊し、最終的には照射容器の内壁に付着した。約1時間のレーザー光照射後、気体生成物として一酸化炭素(CO)が生成し、同時に約30-60mgの超微粒子が作製することできた。 この超微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、超微粒子は粒径が6-10nmで平均粒径が8nmと均一な球状であった。また、作製した超微粒子の物性測定から、鉄・コバルト合金超微粒子であること、一般的に得られる室温安定相のアルファ鉄・コバルト合金(体心立方構造、強磁性)ではなく、面心立方構造、常磁性、Coを10%以下含むガンマ鉄・コバルト合金超微粒子であることがわかった。また種々の温度での磁化量の測定により、このガンマ鉄・コバルト合金超微粒子は比較的低温(約200℃)で変態し、強磁性体のアルファ鉄・コバルト合金と変態することがわかった。 ガンマ鉄・コバルト合金超微粒子は、従来高温においてしか安定に存在しえなかった高温安定相の遷移金属合金超微粒子であり、本研究によってはじめて作製に成功し、その物性についても調べた。
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