GMA(ガスシールドメタルアーク)溶接では、アーク熱によって電極ワイヤの端部が溶融し、溶滴となって溶融池へ移行する。溶滴移行の形態は、溶接条件やワイヤの材質・径など多くの因子によって変化する。アーク長を短かくすると、ワイヤ端の溶滴と溶融池が接触して、電気的にも回路が短絡する橋絡移行(短絡移行)が起こる。定電圧特性で短絡時に大電流が流れるような従来電源を用いると、スパッタが発生するなど溶接施工上問題になることが多い。本研究では橋絡移行現象の機構について、とりわけ短絡電流による電磁ピンチ力の効果を明らかにするため、アーク溶接の橋絡移行をモデル化し、MAC法による数値解析と水銀などを用いたモデル実験の両面から検討した。以下に得られた結果を要約する。 1.懸垂液滴を液面に接触させると毛管現象によって流れが生じ、橋絡部を形成する。橋絡部形状の時間的変化は、通電の有無によって異なり、液滴の大きさや電流値、通電を開始するタイミングに支配される。 2.短絡電流を高くすると、電極端部の液滴がプールに接触してから、橋絡部が分離するまでの時間を短くすることができる。 3.橋絡形状やくびれ径の計算値は、高速度写真観察による実験結果とよく一致した。数値計算結果から、液柱内の圧力分布は通電の有無によって異なり、移行過程での形状ならびに橋絡移行時間に影響を及ぼしていることが推察できた。 4.橋絡部外観形状が同じでも通電の有無によって、橋絡液柱内部および周辺の流れは異なった状態にあり、大きな短絡電流は液柱分離だけでなく、プール表面の波動の駆動力にもなる。
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