研究概要 |
今年度は主に液体金属(Bi,Pb,Sn,Ag,Au)によるダイヤモンドの濡れ性の測定および原子間力顕微鏡によるダイヤモンド表面の原子レベルでの観察を行い,以下の知見を得た. 1.液体純金属によるダイヤモンドの濡れ性はダイヤモンドの表面方位に依存する. 2.濡れ性はダイヤモンド表面の水素の吸着・脱離,黒鉛化にいちじるしく影響される. 3.液体金属(Bi,Pb,Sn,Ag,Au)/ダイヤモンド系の濡れ性は物理的な相互作用が支配的であった. 4.最も低温の測定である液体Biとダイヤモンドとの付着の仕事の表面方位依存性は原子間力顕微鏡によって得られた相互作用エネルギーの方位依存性と定性的によい一致を示した. 5.液体Au/ダイヤモンド(lll)面は非常に特異な濡れ挙動を示し,ダイヤモンドの濡れ性が表面の構造を鋭敏に反映することが明かとなった. 6.濡れ性の測定を行うことにより,ダイヤモンド表面の構造変化を予測することが可能である. 以上の知見のうち,6.の濡れ性がダイヤモンド表面の構造変化の予測に利用できるという結果は,従来のダイヤモンドの構造解析は,ある限られた条件のものであったのに対し,ダイヤモンドの表面構造のより一般的な解釈を与えることが可能であることを示唆しており,平成5年度においてはこの点を中心に研究を行う予定である.
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