研究概要 |
昨年度の研究において,溶融純金属(Bi,Pb,Sn,Ag,Au)によるダイヤモンドの濡れ性はダイヤモンドの表面の方位に依存するのみならず,温度,表面の吸着物質の有無,黒鉛化にも大きく依存することが明かとなったため,本年度の研究においてはダイヤモンドの表面構造の変化と濡れ性との相関を明らかにするため以下の研究を行い,興味ある結果が得られた。 本年度の研究では溶融金属として蒸気圧が比較的低く,Cとの反応性および溶解度の無いSnを選び,ダイヤモンドの濡れ性をSnの融点から1700Kまで測定した。溶融Snによるダイヤモンドの濡れ性の温度依存性は従来多くの系で報告されているものとは大きく異なることが明かとなった。これまで,溶融金属による種々の固体(酸化物,炭化物,窒化物,黒鉛)の濡れ性は非常に多くの系で報告されているが,そのいずれもが温度の上昇に伴って接触角が直線的に減少するとされているのに対し,溶融Snによるダイヤモンドの濡れ性の温度依存性は特異な挙動を示した。接触角はダイヤモンドのいずれの面においても低温では150〜160゚の高い値を維持し,1100K付近で急激な減少を示した後,110〜120゚に回復する。1650K付近においてさらに増大し,130〜140゚に達する。このような各温度における接触角の増減はダイヤモンド表面の構造変化に起因し,1100K付近ではダイヤモンド表面からの水素の脱離に伴う表面エネルギーの増加,1650K付近ではダイヤモンド表面の黒鉛化に伴う表面エネルギーの減少によることが明かとなった。
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