繰返し荷重を受けながら使用されている溶接構造物の累積疲労損傷を非破壊的に検出する可能性を研究するために、疲労の進行につれて試験片表面に発生する顕微鏡的マイクロ亀裂の発生挙動ならびに進展挙動を調べた。 まず、軟鋼及び60キロ高張力鋼の圧延材ならびに溶接継手から、機械加工により試験部直径8mm、標点距離12.5mmの平滑丸棒試験片を採取した。試験部が歪み制御両振りとなるように繰返し荷重を与え、破断寿命が10^2〜10^7の範囲内になるように歪み振幅を制御した。疲労過程で適当な繰返し数ごとに試験機を一時停止し、試験片表面のマイクロ亀裂をレプリカに転写し、これを光学顕微鏡及び画像解析装置によって画像二値化処理を行ない、さらに各亀裂の長さ及び亀裂数を解析した。疲労損傷のパラメタとして、単位面積内の亀裂総数、視野内での最長亀裂の長さ、亀裂長さとその長さの亀裂数との積の累積和を定義した。いずれのパラメタも繰返し数に対して上に凹の指数関数的な増加傾向を示し、その定数と指数は供試材によって若干異なったが、しかし同一材料に関しては指数と定数は歪み振幅に依存せず、ほぼ同じ値を示した。このことから、材料の表面に発生するマイクロ亀裂を観察することにより、その材料の疲労損傷の進行過程を把握できることが明らかになった。 なお、来年度はオーステナイト系ステンレス鋼316材及び80キロ高張力鋼の母材と溶接金属を供試材として同様な実験を行なう予定である。
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