繰り返し荷重を受ける溶接構造物の累積疲労損傷の非破壊的検出の可能性を明らかにするために、疲労の進行につれて試験片表面に発生するマイクロクラックの発生挙動ならびに進展挙動を調べた。平成4年度は軟鋼及び600MPa級の高張力鋼の母材と溶接金属を試験対象とし、平成5年度は800MPa級の高張力鋼とオーステナイト系ステンレス鋼SUS316NGの母材と溶接金属を試験対象とした。 最小部直径8mm、標点距離12.5mmの平滑丸棒試験片を用いて、歪制御両振りの疲労試験を行った。疲労荷重を加え始めた後、適当な繰り返し数ごとに試験機を一時停止し、試験片表面のマイクロクラックをレプリカに転写し、これを光学顕微鏡及び画像解析装置によって画像二値化処理を行ない、各亀裂の長さと亀裂数を解析した。疲労損傷のパラメターとして、単位面積内の亀裂総数、主たる亀裂の長さ、および全亀裂長さの総和をとり、これらパラメターの繰り返し数に対する依存性を調べた。いずれのパラメターも、肉眼亀裂発生寿命で規準化した繰り返し数比に対して上に凹の指数関数的な増加傾向を示した。 計8種類の供試材についての全試験結果から、歪振幅が約0.3%以上ならば、疲労損傷の進行に伴って試験片表面に発生するマイクロクラックの長さと数の観察から、それまでに蓄積された疲労損傷を推定し、ひいては疲労寿命を予測し得るとの結論を得た。
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