研究概要 |
1、原子スペクトル分析の濃縮分離法として既に用いられている市販のイミノ二酢酸樹脂と,新たに合成した8-Quinolinolをシリカゲルに固定した樹脂を,それぞれ前処理法に用いて分離濃縮法の新展開をはかった.すなわち,カラム/オフライン法として適用することによる目的元素の分析ブランクの最小化を検討し,その応用性の拡大を可能とした.次に,新しい分析法であるOn-line分析法にそれぞれ発展させるための検討を行い,わずか5mlの海水,河川水を被験試料として,これら試料中のサブppbレベルの微量金属の分析を可能とした.大西洋の海洋水等を分析して,その正確度,ブランク値を明かにし,得られた成果を日本分析化学会第41年会(平成4年9月)において発表した. 2、上記で検討したキレート樹脂は,遷移元素を妨害マトリックスから分離し濃縮することが可能であったが,白金族の濃縮法としては適用できなかった.また,中性あるいは弱アルカリ性溶液からの濃縮法であるため,都市粉塵試料のようなマトリックス濃度が高い試料への応用も困難であった.そこで、酸性溶液からの濃縮法を開発した.すなわち,液状イオン交換体を疎水性材料表面に担持させた新しい樹脂を創製し,その吸着特性を35元素について検討した結果,白金族を含む多くの元素が塩酸溶液から濃縮出来ることを明らかにし,環境試料中の白金の分析法を確立した.新たに創製した樹脂をカラム法で用いれば,樹脂に捕集した白金を小量の酸(塩酸/過塩素酸)で溶離でき高い濃縮率が得られた.さらに,溶離条件を検討し,白金の分析へ妨害となるハフニウムとの分離が可能となった.これらの成果を日本化学会第65春季年会(平成5年3月)で発表した.
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