イオン感応性電界効果トランジスター(ISFET)は小型化可能なイオンセンサーであるが、イオン感応膜の安定性などの問題で、あまり高性能のものは得られておらず、特に、ニュートラルキャリヤ型ISFETでは高い実用性を有するものは皆無に近い。本研究では、カリクサレンイオノフォアを用いるイオン感応膜の設計を試み、高選択性、高性能のニュートラルキャリヤ型半導体イオンセンサーの構築を目指した。 平成4年度の研究では、カリクサレンイオノフォア非対称構造を導入し、カリクサレンイオノフォアのシリコーンゴム感応膜への分散性を改善したが、本年度は、オリゴシロキサン残基を導入し、イオノフォアの分散性向上を図った。期待通り、均一なカリクサレン/シリコーンゴム感応膜が得られ、電子顕微鏡観察などにより実証された。また、このイオン感応膜の膜インピーダンスは比較的小さく、高分散性を反映した。一方、従来より用いられているカリクサレンイオノフォアのシリコーンゴムへの分散性は乏しく、不均一な膜しか得られなかった。また、その膜のインピーダンスも大きく、ナトリウムISFETの電位安定性は低い。このオリゴシロキサン残基を有するカリクサレンイオノフォアを用いるナトリウムISFETは高イオン選択性で長寿命であり、高い実用性を有していることが判明した。臨床分析における実用性を検討するために、血液および尿中のナトリウム定量を試みたところ、極めて良好な結果が得られた。
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