研究概要 |
1.β-シクロデキストリンは3個の水酸基を持っているが、その中の2位、3位または6位の一つを、2位と3位、2位と6位あるいは3位と6位の二つを、そして2位、3位および6位の全てをメチル化した誘導体の合成に成功した。これらを泳動溶液中に添加したキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)により、12種類のダンシルアミノ酸の光学分割を行ったところ、3,6-ジメチル化、2,6-ジメチル化および2-モノメチル化により、光学分割能が未修飾のβ-シクロデキストリンに比べ著しく低下することが分かった。また、未修飾および6-モノメチル-β-シクロデキストリンではD-体がL-体より早く移動するが、2-モノメチル化を除く他のメチル化β-シクロデキストリン誘導体では逆にL-体の方が早く移動し、不斉認識における選択性が全く逆転するという大変興味深い変化が判明した。 2.上記メチル基の代わりにアセチル基の選択的導入も試み、3-および6-モノアセチル化、2,3-および3,6-ジアセチル化したβ-シクロデキストリン誘導体を単離することができた。これらを泳動溶液中に添加したCZEによるダンシルアミノ酸の光学分割において、6-モノアセチル誘導体は高い不斉認識能を示すが、他の3種類のアセチル誘導体はほとんど不斉認識能を示さなかった。 これは置換基の大きさと極性の違いにより、ダンシルアミノ酸とうまくフィットできないためと推定される。したがって、ダンシルアミノ酸より立体的にもう少し小さい分子の認識を検討する予定である。 3.溶液中におけるシクロデキストリンの分子認識能のもう一つの評価法として、600MHz ^1H NMRを用いて一部のシクロデキストリン誘導体について検討を行っている。その結果、シクロデキストリン空洞と認識される分子との立体的位置の関係、CZEとNMRにおける認識能の現われかたの違いなどが判明しつつある。
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