反応イオン系について検討を行い、メタン/アミン塩酸塩系の試薬ガスを用い、正イオンCIでNH_4^+、負イオンCIでCI^-を同時に生成させ、糖類、アルコールなど多くの化合物に対し(M+NH_4)^+、(M+Cl)^-の両者を生成させることができた。またメタン/水系の試薬ガスでは反応イオンとしてH_3O^+を生成させ、アルカンなど通常は付加イオンを生じない化合物にも(M+H_3O)^+を生成させることができた。衝突活性化解離(CAD)を利用した分子量推定法の研究では、(M+R)^+の同定が分子量を求めることに等しいことに注目し、前年度に得られた結果から、(M+R)^+→R^++M{(M+R)^+:付加イオン、R^+:反応イオン、M:分子}及び(M+R)^+→MH^++(R-H)の利用について検討した。その結果、付加イオンのCADを利用した2つの分子量推定法を確立し、標準試料を用いてその検証を行った。最初の方法はまず、既知の反応イオンR^+を生じる親イオンを親イオン走査モードで捜し、付加イオン候補を見い出した後、そのイオンの娘イオンスペクトルを測定し、MH^+とR^+相当のピークが出現していることを確認し、(M+R)^+の同定を行った。2番目の方法では前と同じ手順で付加イオン候補を見いだし、それが付加イオンであるか否かをニュートラルロス走査を行って分子Mに相当する中性種の脱離を確認することによって付加イオンの同定を行った。また、この手法を未知の有機合成化合物である実際試料に適用した結果、主成分の分子量を求めることができた。これらの手法は混合物や共存物が存在する系にも適用でき、CI法による分子量推定の適用範囲の大幅な拡大を図れることができた。
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