無機固体(粉体)を粉砕などのメカノケミカル処理をすると、粒子の微細化、表面および内部構造の変化、反応性増大等の諸現象が起こる。この実験事実は広く工学的に応用されているが、そのメカニズムの解明は不十分である。本研究では、メカノケミカル活性化の現象に関して^<27>Al MASNMR、XPS、SEMなどの表面分析に加えて、ETA、TG、DTAなどの種々の熱分析的手法を用いて定量的に検討した。最も代表的なセラミック材料の一つであるgibbsite、bayerite、boehmiteのアルミナ水和物を4または8時間ボールミル粉砕すると、完全に無定形相に変化した。この無定形相の大部分は、出発物質と同じ量論組成を持つ無定形アルミナ水和物であるが、^<27>Al MASNMRスペクトルにおける4配位のAlの出現、およびXPSにおけるOls、Al2s、Al2pスペクトルの結合エネルギーの変化挙動などから、無定形アルミナ水和物粒子の表面の一部が、さらに無定形アルミナヘメカノケミカル脱水したことがわかった。一方、エマネーション(ETA)熱分析の結果、未粉砕試料では脱水反応に対応してETAピークが出現したが、粉砕によって無定形化したアルミナ水和物では、ETAピークはほとんど出現せず不活性になること、また、α-Al_2O_3への転移のDTA発熱ピークより低温でETAピークが出現するなど、従来のTG、DTAでは観察されない興味ある挙動が観察され、ETA併用の有効性が確かめられた。
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